夜勤をやめた人は、そろって「よかった」と言います。ただ、その言葉が自分にも当てはまるのかどうかは、体験談を何本読んでも分かりません。
先に数字を出します。二交代制の夜勤手当は1回11,815円で、月4回なら年間567,120円が消えます(1回あたりの出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」2025年6月24日公表。年額は編集部の算出)。「やめてよかった」と言えるかどうかは、この額を先に数えたかどうかで決まる、というのが編集部の考えです。
以下では、消える金額、やめて実際に変わるもの、移った先で新たに発生する拘束の順に整理します。使うのはすべて公的な調査と統計のデータです。
夜勤をやめて最初に起きるのは、手当がまるごと消えることです
**二交代制で月4回の夜勤に入っているなら、夜勤をやめた時点で年間567,120円がなくなります。**内訳は1回11,815円に月4回と12か月をかけたもので、この年額は編集部の算出です(1回あたりの平均額の出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」2025年6月24日公表)。
勤務形態と回数で額は変わります。次の表は、1回あたりの平均額に月の回数をかけた編集部の試算です。
| 勤務形態と月の回数 | 1か月 | 1年 |
|---|---|---|
| 二交代制 月4回 | 47,260円 | 567,120円 |
| 二交代制 月5回 | 59,075円 | 708,900円 |
| 三交代制 準夜勤・深夜勤を月4回ずつ | 41,128円 | 493,536円 |
(1回あたりの平均額=二交代制の夜勤11,815円・三交代制の準夜勤4,567円・深夜勤5,715円。出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査。月額と年額は編集部の算出)

この金額は、回数を工夫して取り戻せる性質のものではありません。夜勤の回数が一定回数を超えた場合の増額・加算制度は、69.6%の施設で「ない」と回答されています(出典:同調査)。単価が上がる仕組みがない以上、収入は回数にほぼ比例して落ちていきます。
編集部は2026年9月5日に、このキーワードの検索上位10件の見出しを抽出しました。**「収入が減る」とは書かれていても、いくら減るのかを金額で示した記事は見当たりませんでした。**やめるかどうかを決める場面で、ここが空欄のまま残るのは危険です。
「やめてよかった」の中身は、賃金ではなく業務量の側にあります
夜勤をやめた人が何に満足しているのかは、賃金満足度のデータからある程度まで逆算できます。まず、やめる前の状態を示す数字から見ていきます。
病院に勤める看護職員のうち、賃金額に「満足」「やや満足」と答えたのは11.8%で、「やや不満」「不満」は64.2%でした(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。不満が最も高かった項目は「業務量」の56.2%です。次いで「業務内容」51.8%、「他業種も含めた同年代・同性の平均的給与と比較」50.4%と続きます。
編集部はこう読みます。病院で働く看護職員の不満の中心にあるのは、金額そのものよりも「その金額で引き受けている業務量」のほうです。夜勤をやめて減るのは業務量と拘束であり、賃金の側はむしろ下がります。
同じ調査には、就業継続との関係を示す数字もあります。賃金に「満足」と答えた層で「退職は考えていない」は45.0%、「不満」と答えた層では25.0%でした(出典:同調査)。訪問看護ステーションに勤める人は全項目で病院より満足度が高く、全体の「満足」「やや満足」は23.6%です(同)。
賃金への不満を動機にして夜勤をやめると、その判断はおそらく裏切られます。やめて改善するのは業務量と生活時間への納得感であり、金額への納得感ではありません。これは編集部の判断であり、調査がそう書いているわけではありません。
モデルケース:夜勤をやめたいが、収入を下げられないBさんの場合
以下は、千葉県内でよくある状況をもとにしたモデルケースです。実在の人物・医療機関ではありません。
Bさん(仮名)/30代半ば/東葛南部圏域(船橋・市川など)の回復期病棟/経験12年目
二交代制で月4〜5回の夜勤に入っています。子どもが未就学児で、夜勤の翌日は生活リズムが戻りません。時短勤務と夜勤免除を相談しましたが、人員の都合で通っていません。夜勤手当が月収の1割前後を占めており、日勤のみに移ると手取りが下がることが最大の障壁になっています。
**この「月収の1割前後」はBさんの設定値であり、調査で得られた数値ではありません。**編集部が作成した仮想の状況です。並べて見るべき実数は次のとおりになります。
二交代制の夜勤手当の平均は1回11,815円で、月4〜5回なら47,260〜59,075円です(1回あたりの出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査。月額は編集部の算出)。Bさんの状況で決め手になるのは、この5万円前後を何と交換するのかという一点です。
交換の相手が「子どもと過ごす時間」なら、比較の形になります。一方で「楽になること」を相手にすると、比較できないまま後悔の材料だけが残ります。判断の材料に使えるのは、月47,260〜59,075円という実額のほうです(編集部の算出)。
夜勤をやめた先にも、別の拘束が待っています
夜勤のない移り先としてよく挙がるのが訪問看護ステーションです。ただし、ここにはオンコールという別の拘束があります。オンコールとは、勤務時間外に待機し、必要があれば電話対応や緊急の訪問を行う仕組みのことです。
このオンコール手当の実額も、同じ調査で公表されています。金額と回数は次のとおりです(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。
| 内容 | 1回あたりの手当 | 2024年12月の平均回数 |
|---|---|---|
| 待機のみ | 2,233円 | 7.7回 |
| 電話対応 | 609円 | 5.0回 |
| 緊急出動 | 1,791円 | 2.3回 |
回数をかけると、待機だけで月17,194円、3項目を合計して月24,358円になります(編集部の算出。回数はいずれも2024年12月の平均値)。夜勤手当の月4回分47,260円と比べると、半分程度の水準です。
金額だけの話ではありません。**待機は月7.7回発生しており、その日は夜間に呼ばれる可能性を抱えたまま自宅で過ごすことになります。**夜勤が月4回から、待機が月7.7回に置き換わるという見方もできます。
- 夜勤:1回の拘束は長いが、回数が事前に決まっていて予定を立てられる
- オンコール:1回の拘束は軽いが、回数が多く、呼ばれるかどうかは当日まで分からない
編集部の判断はこうです。**夜間に起こされる可能性を消すことが目的なら、訪問看護ステーションを第一候補にはしないほうがよいと考えます。**待機の有無と月あたりの回数は職場ごとに異なるため、応募前に求人票と就業規則で必ず確認してください。
年収の差は、夜勤手当の年額とは別の数字です
役職別の年収も公表されています。正規雇用フルタイムのスタッフ(非管理職)で、病院5,299,796円・訪問看護ステーション5,087,248円でした(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。差は212,548円です(編集部の算出)。
**この212,548円と、先に示した夜勤手当の年額567,120円を引き算しないでください。**役職別年収と夜勤手当は別の設問・別の集計であり、差を評価できる関係にありません。同じ調査の就業先別の集計では、訪問看護ステーションの回答者の平均年齢が病院より約9歳高いという違いもあります。
ここで確認しておきたいのは、「夜勤をやめると年収がいくら下がる」と一言で言える数字は、編集部が確認した範囲では見当たらないという事実のほうです。分かるのは、夜勤手当という項目が消えるという確実な変化だけです。
千葉県では、看護師の31.5%が病院以外で働いています
夜勤のない職場へ移るという選択が特殊なものかどうかは、実数で確かめられます。千葉県の統計で見てみます。
千葉県の就業看護師は52,318人です。就業場所別の内訳は次のとおりでした(出典:千葉県「令和6年千葉県衛生統計年報(衛生行政)」2024年12月31日現在)。
| 就業場所 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 病院 | 35,822人 | 68.5% |
| 診療所 | 6,963人 | 13.3% |
| 介護保険施設等 | 3,318人 | 6.3% |
| 訪問看護ステーション | 3,101人 | 5.9% |
| 社会福祉施設 | 1,196人 | 2.3% |
| その他 | 1,918人 | 3.7% |
病院以外で働いている看護師は16,496人で、県内の看護師の31.5%にあたります(編集部の算出。52,318人から病院の35,822人を差し引いたもの)。およそ3人に1人が病院以外にいる計算です。

ただし注意点があります。**この内訳は「夜勤の有無」で分けたものではありません。**病院以外にも夜勤のある職場はあり、病院の中にも外来のように夜勤のない部署があります。この数字が示すのは、病院以外の受け皿が県内に一定の規模で存在するという事実までです。
編集部の結論:軸によって、答えは変わります
「夜勤をやめてよかった」と言えるかどうかは、あなたが何を最優先にしているかで決まります。人それぞれで終わらせず、軸ごとに答えを書きます。
- **体調と生活リズムを最優先するなら、やめる価値があります。**失うのは年間567,120円前後(二交代制で月4回の場合・編集部の算出)で、これは先に数えられる金額です。数えられるものを、数えられないものと交換する判断になります
- **収入を最優先するなら、やめないほうが合理的です。**回数を増やしても単価は上がりませんが(加算制度が「ない」69.6%)、回数を減らせば収入は素直に落ちます。減らす方向の調整で足りるなら、まず回数の相談から始める番です
- **子どもの生活時間が軸なら、やめる前に職場内の選択肢を先に当たってください。**異動と夜勤免除の相談が残っているなら、収入を落とさずに目的を達成できる可能性があります
- **賃金への不満が動機なら、夜勤をやめても解決しません。**不満が最も高いのは業務量への評価であり(56.2%)、夜勤をやめれば賃金の側は下がるからです
どの軸を選ぶ場合でも、動く前に確認しておきたいことがあります。応募や相談の前に、次の4つを押さえてください。
- 移る先に待機(オンコール)があるか。あるなら月に何回か
- 基本給がいくらか。手当を含まない額で比べる
- 現職に夜勤免除・時短勤務の運用実績があるか
- 賞与を含めた年間の支給額はいくらか
**編集部が勧めるのは、提示された総額ではなく基本給の欄で職場を比べることです。**夜勤をやめる判断では手当の分がまるごと落ちるため、総額どうしを並べても比較が成立しません。
なお、勤務時間や休業の扱いに個別の事情がある場合は、まず勤務先の就業規則を確認してください。そのうえで、労働基準監督署などの公的窓口や社会保険労務士に相談することをおすすめします。本記事は一般的な情報の整理です。
よくある質問
夜勤をやめてよかったことは?
検索上位の記事が挙げているのは、生活リズムの回復・体調の改善・家族と過ごす時間の3つです(2026年9月5日に上位10件の見出しを抽出して確認)。**ただし、これらを裏づける公的な統計は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。**数字で確かめられるのは失う側であり、二交代制で月4回なら年間567,120円になります(編集部の算出)。
看護師が夜勤をやめるとどうなる?
**確実に起きるのは夜勤手当がなくなることです。**二交代制なら1回11,815円が支給されなくなります(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。体調や生活リズムがどう変わるかは個人差があり、編集部が確認した範囲では公的な統計は見当たりません。
夜勤はやめた方が良いですか?
**軸によって答えが変わります。**体調と生活リズムを最優先するならやめる価値があり、収入を最優先するなら回数を減らす調整から入るほうが合理的です。賃金への不満が動機の場合は、夜勤をやめても金額の側は改善しません。
看護師の夜勤をやめたいのですが、どうしたらいいですか?
**順番があります。**まず現職での異動・夜勤免除・回数減の相談を当たり、それでも通らない場合に転職を検討してください。転職先を比べるときは、基本給と、待機(オンコール)の有無・月あたりの回数を必ず確認します。
まとめ
- 二交代制で月4回なら、夜勤をやめて消えるのは年間567,120円です(1回11,815円・編集部の算出)
- 回数を増やしても単価は上がりません。増額・加算制度は**69.6%の施設で「ない」**と回答されています
- 賃金額に満足しているのは病院勤務者の**11.8%で、不満が最も高い項目は業務量の56.2%**です
- 訪問看護ステーションにはオンコールという別の拘束があり、待機手当は1回2,233円・待機は月7.7回です(回数は2024年12月の平均)
- 千葉県では、看護師の31.5%(16,496人)が病院以外で働いています(編集部の算出)
「夜勤をやめてよかった」は、やめた人の実感としては本当でしょう。ただしそれは、その人が失った金額を許容できたという結果でもあります。先に金額を数えないままやめると、後から「こんなに減るとは思わなかった」に変わります。
いま決める必要はありません。まずは自分の給与明細で夜勤手当が年間いくらになっているかを数え、それが何と交換できるのかを書き出すところから始めてください。
参考・出典
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2025年6月24日公表) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf (2026年9月5日にURLを確認)
- 千葉県健康福祉部健康福祉指導課「令和6年千葉県衛生統計年報(衛生行政)」(2024年12月31日現在) https://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/toukeidata/kakushukousei/eisei/r6-nenpou-eisei.html (2026年9月5日確認)
