夜勤なしの年収を調べると、記事ごとに違う数字が出てきます。理由は単純で、月額を12倍した数字と、賞与まで含めた数字が混ざっているからです。
結論から書きます。編集部が確認した範囲で「年収」として公表されているのは、日本看護協会の役職別年収です。病院のスタッフ(非管理職)で5,299,796円、訪問看護ステーションで5,087,248円でした(出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」2025年6月24日公表)。
以下では、この数値の読み方、消える夜勤手当の年額、そして就業先ごとの内訳の順に整理します。
この調査で「年収」として公表されている数値はひとつだけ
先に整理しておきます。日本看護協会の調査には、金額を示す指標が複数あり、それぞれ含むものが違います。
| 指標 | 中身 | 賞与 |
|---|---|---|
| 基本給月額 | 基本給のみの月額 | 含まない |
| 税込給与総額 | 基本給+諸手当(夜勤手当・時間外手当等)の月額 | 含まない |
| 賞与 | 2024年1〜12月の賞与総額 | ― |
| 役職別年収 | 役職別に集計された年収 | ― |
(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)
「税込給与総額」は月額であり、年収ではありません。これを12倍した数字を年収として扱うと、賞与が抜け落ちます。本記事で「年収」と書くのは、役職別年収の表の数値だけです。
役職別年収は次のとおりです。
| 役職 | 病院 | 訪問看護ステーション |
|---|---|---|
| スタッフ(非管理職) | 5,299,796円 | 5,087,248円 |
| 中間管理職(主任・副看護師長相当) | 6,314,987円 | 5,760,740円 |
| 中間管理職(看護師長相当) | 6,763,829円 | 5,814,926円 |
| 管理職(副看護部長相当) | 7,585,014円 | 6,247,840円 |
| 管理職(看護部長・副院長相当/管理者) | 8,180,594円 | 5,911,504円 |
(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査。正規雇用フルタイム)
スタッフどうしの差は212,548円です(編集部の算出)。**ただしこの表は「夜勤あり/なし」で分けた集計ではありません。**病院にも夜勤のない部署はあり、訪問看護ステーションにもオンコールがあります。

夜勤手当を年額に直すと、567,120円になる
次に、夜勤をなくすと消える金額です。二交代制の夜勤手当は1回あたり11,815円が平均でした(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。
年額に直す計算は次のとおりです。
- 11,815円 × 月4回 × 12か月 = 567,120円
- 11,815円 × 月5回 × 12か月 = 708,900円
(いずれも編集部の算出。1回あたりの平均額に、想定した回数と12か月を掛けたもの)
**この金額が上がる見込みは、制度としてはほとんどありません。**回数超過時の増額・加算制度を持たない施設は69.6%にのぼります(出典:同調査)。
ここで注意です。先ほどの役職別年収の差212,548円と、この567,120円を引き算しないでください。前者は年収の設問、後者は手当の単価から編集部が組み立てた金額であり、系列が違います。回答している集団も同じではありません。
**使い分けはこうです。**567,120円は「自分の明細から消える額」、212,548円は「その職場の年収水準の差」。混ぜると、どちらの数字も意味を失います。
夜勤なしの選択肢ごとに、何が減り何が増えるか
就業先別の内訳です。同じ調査の中でも、指標によって順位が入れ替わります。
| 就業先 | 平均基本給 月額 |
平均税込給与総額 (月額) |
賞与 (2024年1〜12月) |
時間外手当 (2025年1月支給) |
平均年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 病院 | 260,451円 | 382,093円 | 1,182,440円 | 27,457円 | 38.2歳 |
| 診療所 | 256,330円 | 350,857円 | 939,910円 | 15,681円 | 43.8歳 |
| 介護系サービス | 264,418円 | 351,599円 | 1,002,262円 | 16,571円 | 48.9歳 |
| 訪問看護ステーション | 254,476円 | 347,181円 | 949,091円 | 31,772円 | 47.0歳 |
| 看護系教育研究機関 | 305,668円 | 373,036円 | 1,451,286円 | 17,969円 | 47.1歳 |
(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査。基本給・税込給与総額・平均年齢は正規雇用フルタイム・非管理職・看護師の個人調査、賞与は正規雇用フルタイム)
読み取れることは3つあります。いずれも、この表に載せた5つの就業先区分の中での比較です。
- **税込給与総額が最も高いのは病院(382,093円)**だが、基本給が最も高いのは看護系教育研究機関(305,668円)
- **賞与が最も高いのも看護系教育研究機関(1,451,286円)**で、病院を268,846円上回る(編集部の算出)
- **時間外手当が最も高いのは訪問看護ステーション(31,772円)**で、病院(27,457円)を4,315円上回る(編集部の算出)
この表の数値を横に足して年収を作らないでください。同じ調査でも設問が別で、回答した人の集団も一致しません。「基本給×12+賞与」のような合成をすると、公表されていない数字を作ることになります。
さらに、回答者の平均年齢が最大で約10歳違います(病院38.2歳・介護系サービス48.9歳)。年齢構成の異なる集団を比べている点は、差を読むときに必ず織り込んでください。
基本給で見ると、順位が入れ替わる
編集部が最も重要だと考えるのはここです。看護系教育研究機関の基本給は305,668円で、病院を45,217円上回ります(編集部の算出)。
基本給が重要な理由は2つあります。賞与の算定基礎になること、そして働き方を変えても消えないことです。夜勤手当は夜勤をやめれば消えますが、基本給は毎月の固定額として残ります。
夜勤なしに移るときに見るべきは「年収がいくら下がるか」ではなく、「基本給がいくらになるか」です。これが編集部の立場です。
**そして訪問看護ステーションには、夜勤の代わりにオンコールがあります。**オンコールとは、勤務時間外に待機し、必要に応じて電話対応や緊急の訪問を行う仕組みです。手当は待機のみで1回2,233円(2024年12月の平均7.7回)、電話対応1回609円、緊急出動1回1,791円でした(出典:同調査)。夜勤なしは、夜間の拘束がないことと同じではありません。
年代別の賃金カーブが、動く時期の材料になる
いつ動くかを考える材料として、年代別の賃金があります。
病院勤務の看護師(正規雇用フルタイム・非管理職)の基本給月額は、20〜24歳221,374円から45〜49歳の297,249円がピークです(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。20代前半を100とすると、ピークでも134%にとどまります(基本給ベース。編集部の算出)。
税込給与総額でも、20〜24歳325,906円から45〜49歳421,118円がピークという形です(出典:同調査)。
**注意点があります。この年代別の集計は病院勤務者のものであり、夜勤なしに限定したデータではありません。**編集部が確認した範囲では、夜勤の有無で分けた年代別の賃金データは見当たりませんでした。
そのうえで編集部の見方を書きます。**20代前半から40代後半までのおよそ25年で基本給が34%しか伸びないなら、待つより基本給の水準が高い就業先へ移るほうが差は大きくなります。**この25年間の増加額は75,875円です(297,249円−221,374円。編集部の算出)。看護系教育研究機関と病院の基本給の差45,217円は、その6割に相当します(編集部の算出)。

千葉県で夜勤なしに移るときの需給
移りやすさも判断材料になります。千葉県の数字を見ておきます。
千葉県の「保健師,助産師,看護師」の有効求人倍率は2.23倍でした(有効求人数3,199・有効求職者数1,433。出典:千葉労働局「求人・求職・賃金バランスシート」2026年7月)。
ただし読み方に注意が必要です。
- これはハローワークの職業紹介統計であり、民間の紹介会社を含む求人市場全体の倍率ではありません
- 分類は「保健師,助産師,看護師」であり、看護師だけの値ではありません
- 常用的フルタイムと常用的パートタイムの合計値です
**したがって「夜勤なしの求人が2.23倍ある」という読み方はできません。**わかるのは、県内のハローワーク経由の看護職求人が、求職者数を上回っている状態にあることまでです。
よくある質問
夜勤なしの看護師の年収はいくらですか?
**夜勤の有無で分けた年収の公的データを、編集部は確認できていません。**確認できたのは就業先別・役職別の年収で、病院のスタッフ(非管理職)5,299,796円、訪問看護ステーション5,087,248円です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。病院には夜勤のない部署も含まれるため、これを「夜勤ありの年収」とは読めません。
夜勤なしの看護師で手取り20万円は目指せますか?
**手取り額は断定できません。**社会保険料・税・扶養の状況・自治体によって控除額が変わるためです。判断材料になるのは額面のほうで、正規雇用フルタイム・非管理職の税込給与総額は診療所350,857円、訪問看護ステーション347,181円が平均でした(出典:同調査)。個別の手取り額は、内定時の労働条件通知書と給与規程で確認してください。
夜勤なしの40代の看護師の年収はいくらですか?
**年代別の年収データを、編集部は確認できていません。**確認できたのは病院勤務者の年代別の月額です。
40〜44歳は基本給267,988円・税込給与総額391,947円でした。45〜49歳は基本給297,249円・税込給与総額421,118円で、これがピークです(出典:同調査)。これは病院勤務者全体の数値であり、夜勤なしに限定した集計ではありません。
夜勤なしだと給料は低いのですか?
税込給与総額(月額)で見れば、病院382,093円に対し診療所350,857円・訪問看護ステーション347,181円で、病院が高くなります(出典:同調査)。ただし上の5区分の中で基本給が最も高いのは看護系教育研究機関の305,668円で、病院260,451円を上回ります。どの指標で比べるかによって結論が変わります。
まとめ
- この調査で**「年収」として公表されているのは役職別年収だけ**です。病院のスタッフ5,299,796円、訪問看護ステーション5,087,248円
- 「税込給与総額」は基本給+諸手当の月額であり、12倍しても年収にはなりません
- 夜勤手当を年額に直すと、二交代制で月4回なら567,120円です(編集部の算出)
- この567,120円と役職別年収の差212,548円は別系列であり、引き算できません
- 就業先の5区分では、税込給与総額は病院が最高、基本給と賞与は看護系教育研究機関が最高と順位が入れ替わります
- **同じ5区分で時間外手当が最も高いのは訪問看護ステーション(31,772円)**で、オンコールもあります
編集部の結論は一つです。**夜勤なしへ移る判断は、年収の差額ではなく基本給と賞与の水準で行ってください。**手当は働き方を変えれば消えますが、基本給は残り、賞与の算定基礎にもなります。
そのうえで、いま動く必要はありません。**20代前半から40代後半までの約25年で基本給が34%しか伸びないという構造を頭に入れ、自分の基本給がいくらなのかを先に確認する。**そこからで十分です。
なお本記事は一般的な情報の整理です。賃金・労働条件の個別の取り扱いは、勤務先の給与規程と労働条件通知書、および労働基準監督署などの公的機関に確認してください。
参考・出典
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2025年6月24日公表。調査期間 令和7年1月14日〜2月25日) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf (2026年9月5日確認)
- 厚生労働省千葉労働局「求人・求職・賃金バランスシート」(2026年7月) https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/R0807BS.pdf (2026年9月5日確認)
