夜勤だけにまとめれば、出勤日数が減って生活リズムも整うのではないか。求人を見ると日給の高さが目を引きます。
結論を先に書きます。夜勤専従者がいる施設は41.7%、そのうち特別手当が「ある」のは14.2%(平均25,000円)でした(出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」2025年6月24日公表)。夜勤専従にすれば手当が別途つく、という前提は多数派ではありません。
以下では、夜勤専従の定義、収入がどこから来るのか、そして何が動かないのかを順に整理します。
夜勤専従とは、日勤に入らず夜勤だけを担当する働き方
**夜勤専従とは、日勤の勤務に入らず、夜勤帯の勤務だけを担当する働き方です。**病院の病棟のほか、介護施設・有料老人ホームなどでも置かれます。雇用形態は常勤・非常勤の両方があります。
日勤と夜勤を交互に行う交代制と違い、**出勤する日数そのものが少なくなるのが最大の特徴です。**二交代制の夜勤は1回が長時間になるため、月8回の夜勤専従なら出勤は月8日という計算になります。
一方で、日中の患者の状態や日勤帯の申し送りに触れる機会は減ります。この記事では、待遇の面に絞って公的データで確かめます。

特別手当がある施設は14.2%にとどまる
本記事の核心です。夜勤専従だから別枠の手当がつく、とは限りません。
日本看護協会の調査によると、次のとおりです(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。
| 項目 | 割合 | 平均 |
|---|---|---|
| 夜勤専従者がいる施設 | 41.7% | ― |
| 上記のうち、特別手当が「ある」 | 14.2% | 25,000円 |
| 上記のうち、負担軽減の特別休暇等が「ある」 | 20.7% | 2.33日 |
**夜勤専従者を置いている施設のうち、特別手当がある施設は7施設に1施設程度です。**負担軽減のための特別休暇等がある施設も、5施設に1施設程度にとどまります。
つまり、夜勤専従になっても多くの施設では「夜勤手当が回数分つく」以上のことは起きません。求人票の日給が高く見えるのは、特別手当が上乗せされているからではなく、夜勤1回あたりの手当をそのまま日給として表示しているためだと考えられます。
ここは求人票で必ず分けて確認してください。「夜勤専従手当」という名称の項目が別に立っているかどうかが、この14.2%に入るかどうかの分かれ目になります。
では収入はどこから来るのか:夜勤手当×回数
収入の中身を分解します。二交代制の夜勤手当は1回あたり11,815円、三交代制は準夜勤4,567円・深夜勤5,715円が平均です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。
回数をかけると次のようになります。
| 月の夜勤回数(二交代制) | 夜勤手当の合計 |
|---|---|
| 6回 | 70,890円 |
| 8回 | 94,520円 |
| 10回 | 118,150円 |
(1回11,815円に回数を掛けた編集部の算出。出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)
**そして単価は上がりません。**回数が一定を超えたときの加算制度は、69.6%の施設に存在しません(出典:同調査)。回数を増やしても、増えるのは11,815円の倍数だけです。
**注意点があります。夜勤専従者に限定した給与の公的データを、編集部は確認できていません。**上の金額は、夜勤専従かどうかを区別していない夜勤手当の平均から編集部が組み立てたものです。求人票に書かれた日給とは別の数字として扱ってください。
夜勤専従で増えるのは手当であって、基本給ではない
編集部が最も重要だと考える論点です。夜勤専従を選んでも、増えるのは夜勤手当の側だけです。
病院勤務の看護師(正規雇用フルタイム・非管理職)の平均基本給月額は260,451円、税込給与総額は382,093円でした(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。
そして時系列で見ると、動いているのは手当のほうです。**約12年前の同種調査と比べると、病院勤務の看護師の基本給月額は5,868円(約2.3%)の増加にとどまります。**一方で税込給与総額は29,936円(約8.5%)増えています(出典:同調査、および2012年の同種調査。増加額は編集部の算出)。
手当は働き方を変えれば消えますが、基本給は職場を変えても経験として残り、賞与の算定基礎にもなります。
**夜勤専従は、収入を増やす手段ではなく、出勤日数を減らす手段だと編集部は考えます。**根拠は3つです。
- 特別手当がある施設は**14.2%**にとどまる
- 回数超過時の増額・加算制度は69.6%の施設にない
- 増えるのは夜勤手当×回数の分だけで、基本給の水準は変わらない
したがって、**夜勤専従を検討するときに比べるべきは「日給の高さ」ではなく「出勤日数と基本給」です。**日給だけを見て選ぶと、同じ額を得るために身体の負担だけが偏ります。
回数の上限はどこで決まるのか
夜勤専従で必ず出てくる疑問です。先に答えを書くと、編集部が確認した範囲では、個人の夜勤回数を直接縛っているのは職場の勤務表のほうです。
関係するものは2つあります。
- 労働基準法:深夜の時間帯に働かせた場合の割増賃金を定めていますが(労働基準法37条4項。2026年9月5日に原典で確認)、夜勤の回数そのものの上限規定は、編集部が確認した範囲では見当たりません
- 診療報酬の施設基準:入院基本料を算定する病棟には「夜勤を行う看護職員の一人当たりの月平均夜勤時間数が七十二時間以下であること」という要件があります(基本診療料の施設基準等〔平成20年3月5日厚生労働省告示第62号〕第五 二(2)。2026年9月5日に原典で確認)。ただしこれは病棟の平均で判定されます
夜勤従事者として計算に入るのは、月の夜勤時間数が16時間を超えた者とされています(出典:日本看護協会「入院基本料の通則『看護職員の月平均夜勤時間72時間要件』について」2015年11月25日時点)。**夜勤専従者はこの条件を満たすため、計算の分母に入ります。**分母の人数が増えれば病棟の平均は下がるため、この要件が夜勤専従者個人の回数を抑える方向に働くとは限りません。
**本記事ではここまでにとどめます。**条文と計算式は別の記事で扱っています。
千葉県で夜勤専従の求人を見るときに確認する欄
夜勤帯に何人が配置されるかは、病棟が算定している入院料によって前提が変わります。千葉県について、編集部が届出の分布を確認しました。
千葉県の病院名簿(2026年4月1日現在)の284病院に、関東信越厚生局の施設基準届出受理状況(2026年7月1日現在)を突き合わせた結果です。
| 入院料の区分 | 千葉県内の届出病院数 |
|---|---|
| 急性期一般入院料(従来区分) | 93 |
| 急性期病院A一般入院料 | 31 |
| 急性期病院B一般入院料 | 8 |
| 地域包括ケア病棟入院料等 | 62 |
| 回復期リハビリテーション病棟入院料 | 74 |
| 療養病棟入院基本料 区分1 | 85 |
| 療養病棟入院基本料 区分2 | 8 |
(出典:千葉県「令和8年度 病院名簿」2026年4月1日現在、および厚生労働省関東信越厚生局「施設基準の届出受理状況」千葉県・2026年7月1日現在。突き合わせは編集部が実施)
読み方に3つの注意があります。
- 同一の病院が複数の入院料を届け出るため、横に足して病院数にはなりません
- **届出のない病院を「届出なし」と確定できません。**名簿と厚生局データの時点が異なり、突き合わせできなかった病院が含まれます
- **公表されている区分名をそのまま使っています。**急性期病院A・Bを従来の区分に読み替えていません
**求人票で確認したいのは、勤務先の病院名ではなく「配属される病棟が算定している入院料」です。**同じ病院でも病棟ごとに入院料が違い、夜勤帯の人員の前提も変わります。面接では、配属予定の病棟名とその入院料を聞いてください。

よくある質問
夜勤専従看護師の給料はいくらですか?
**夜勤専従者に限定した給与の公的データを、編集部は確認できていません。**判断材料になるのは夜勤手当の平均で、二交代制1回11,815円、三交代制で準夜勤4,567円・深夜勤5,715円です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。二交代制で月8回なら94,520円という計算になります(編集部の算出)。実際の金額は求人票と給与規程で確認してください。
夜勤専従はしんどいですか?
**主観に関わる質問のため、編集部は断定しません。**数字で言えるのは、夜勤専従者がいる施設のうち、負担軽減のための特別休暇等が「ある」のは20.7%(平均2.33日)にとどまるということです(出典:同調査)。**負担への手当てが制度として用意されている施設は多数派ではありません。**健康面の判断は、産業医など専門家に相談してください。
看護師の夜勤専従は月何回まで働けますか?
**編集部が原典で確認した範囲では、夜勤専従者個人の夜勤時間数の上限を定めた規定は、基本診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第62号)には見当たりませんでした。**ただし確認できたのは告示までで、通知や疑義解釈まで含めた確認は済んでいません。実際の回数は、勤務先の就業規則・労使協定・労働契約で確認してください。
夜勤専従に向いているのはどんな人ですか?
**編集部は、出勤日数を減らすことに価値を置く人に向いていると考えます。**根拠は2つの数字です。特別手当がある施設は14.2%、回数超過時の加算制度がない施設は69.6%でした(出典:同調査)。
収入面で有利になる構造が、制度として用意されていません。逆に、基本給を上げたい人や日勤帯の経験を積みたい人には、別の選択肢を勧めます。
まとめ
- 夜勤専従とは、日勤に入らず夜勤帯の勤務だけを担当する働き方です
- 夜勤専従者がいる施設は41.7%、そのうち特別手当が「ある」のは**14.2%(平均25,000円)**です
- 負担軽減の特別休暇等が「ある」のも**20.7%(平均2.33日)**にとどまります
- 収入は夜勤手当×回数で決まり、回数超過時の加算制度は69.6%の施設にありません
- **増えるのは手当の側です。**病院勤務の看護師の基本給月額は約12年で5,868円しか増えていない一方、税込給与総額は29,936円増えています
- 千葉県では284病院のうち93病院が急性期一般入院料(従来区分)を届け出ています。同一病院が複数の入院料を届け出るため、区分の数を足しても病院数にはなりません
編集部の結論はひとつです。**夜勤専従は、収入を増やす制度ではなく、出勤日数を組み替える手段です。**日給の高さに見えているものの中身は、多くの場合、夜勤1回分の手当そのものです。
そのうえで、この働き方を否定はしません。**出勤日数が減ることに明確な価値があるなら、それは十分な理由になります。**ただし比べるべきは日給ではなく、出勤日数と基本給の組み合わせです。
なお本記事は一般的な情報の整理です。勤務条件・健康面の個別の取り扱いは、勤務先の就業規則、産業医、労働基準監督署などの専門家・公的機関に確認してください。
参考・出典
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2025年6月24日公表。調査期間 令和7年1月14日〜2月25日) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf (2026年9月5日確認)
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第62号)第五「病院の入院基本料の施設基準等」二(2) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9732&dataType=0 (2026年9月5日確認)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)37条4項 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 (2026年9月5日確認)
- 公益社団法人日本看護協会「入院基本料の通則『看護職員の月平均夜勤時間72時間要件』について」(2015年11月25日。中央社会保険医療協議会提出資料) https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000105050.pdf (2026年9月5日確認)
- 千葉県健康福祉部医療整備課「令和8年度 病院名簿」(2026年4月1日現在) https://www.pref.chiba.lg.jp/iryou/sidou/documents/r8byouinmeibo.xlsx (2026年9月5日確認)
- 厚生労働省関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況」(千葉県・2026年7月1日現在) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/chousa/kijyun.html (2026年9月5日確認)
