「転職サイトは使わない方がいい」という声を見て、登録の手が止まっていませんか。その声が何を根拠にしているのかを、先に確かめます。
結論を先に書きます。**編集部の立場は「使うな」でも「頼れ」でもありません。**あなたが料金を払わないのは、法律がそう定めているからです(職業安定法32条の3第2項)。その代わりに採用する側が払った金額は、常用就職1件あたり平均で約103万円でした(令和6年度・全産業)。
この2つを知っていれば、使うか使わないかは自分で決められます。以下、無料の理由、採用する側の動き、判断の分かれ目の順に整理します。
転職サイトが無料なのは、法律が求職者からの徴収を禁じているからです
まず、無料の理由を法律で確認します。**担当者がついて求人を紹介するサービスは、法律上は有料職業紹介という事業です。**求人と求職の申込みを受けて、雇用関係の成立をあっせんする事業を指します(職業安定法4条1項)。
「有料」というのは、手数料を取って職業紹介を行う事業という意味です。**その手数料を誰から取れるかを定めているのが、同法32条の3です。**同条2項は次のように定めています。
有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、同項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる。
(職業安定法32条の3第2項。2026年9月5日にe-Gov法令検索の法令APIで条文本文を取得して確認)
**ただし書きのとおり例外はありますが、原則としてあなたから手数料を取ってはならないと定められています。**サービス側の善意でも、キャンペーンでもありません。
なお、求人情報を掲載するサイトやスカウト型のサービスは、有料職業紹介ではなく募集情報等提供にあたります(同法4条6項)。こちらは求人情報の場を提供する事業で、応募の判断はあなたが行います。
**「転職サイトを使わない」という判断は、この2つを分けて考える必要があります。**担当者を通さずに求人だけ見たいなら、後者だけを使うという選択肢があるからです。

あなたが払わない代わりに、採用する側は1件あたり約103万円を払っています
採用する側が払う手数料は、常用就職1件あたり平均で約103万円でした(前年度比+10.9%)。厚生労働省が2026年3月31日に公表した、令和6年度の職業紹介事業報告書の集計結果(速報)の数値です。
同じ集計で、職業紹介事業の手数料収入は全体で約9,835億円(+17.6%)、うち常用就職に係る手数料は約9,136億円(+16.8%)でした。**この約103万円は全産業の平均であり、看護分野に限った金額ではありません。**編集部が確認した範囲では、医療・介護分野が支払う紹介手数料を職種別に示した公的な集計は見当たりませんでした。
ここで押さえておきたいのは、金額そのものより非対称です。同じ1人の入職に対して、あなたに見えている費用は0円で、採用する側に見えている費用は100万円規模になります。
- あなたにとっては、使っても使わなくても支出は変わりません
- 採用する側にとっては、経路が変わると費用が変わります
- だから「使わない方がいい」という声は、あなたの側からより、採用する側から強く出ます
「使わない方がいい」という言葉が、誰の財布の話をしているのかを先に見分けてください。次の節で、公式に声を上げた側を確認します。
手数料の水準に公式に異議を唱えているのは、採用する側です
**2026年3月18日、日本医師会と四病院団体協議会の「有料職業紹介事業に関するワーキンググループ」が報告書をまとめました。**紹介手数料の上限規制の導入や、返戻金制度の義務化などを提言した内容です。日本医師会は、同年3月24日に上野賢一郎厚生労働大臣へ要望書を手交したと公表しています。
これは、看護師を採用する側の団体が、自ら規制を求めている状態です。サービスの品質に不満があるという話ではなく、費用の水準そのものを問題にしているという点で、個人の口コミとは性質が違います。
返戻金制度が論点になる背景には、早期の離職があります。2024年度の既卒採用者の離職率は16.1%で、新卒採用者の8.4%のおよそ2倍でした(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」2026年3月31日公表)。手数料を払って採用した人が早く辞めた場合に、いくら戻るのかという話です。ここから編集部が言えることは、次の2つです。
- **「使わない方がいい」という声の一部は、あなたの損得ではなく病院の費用の話です。**そのまま自分の判断に転用しない方が安全です
- ただし、費用が採用の判断に影響する可能性まで否定はできません。その論点は次の節で扱います
「紹介経由だと採用されにくい」を、編集部は断定しません
**応募の経路によって採用されやすさが変わるかどうかを示した公的なデータは、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。**そのため、この記事では「紹介経由だと不利になる」とも「変わらない」とも書きません。
著者(コロ助)は看護職ではありませんが、別の業界で採用する側として中途採用の面接に立ち会ってきました。**その範囲で言えば、面接の場で応募経路を意識したことはほとんどありません。**見ていたのは職務経歴と受け答えでした。ただしこれは看護の採用ではなく、一人の経験にすぎません。
断定できない代わりに、あなたが自分で確かめられることを挙げます。いずれも登録の前に確認できます。
- **行きたい病院・施設が、自院の採用ページで直接の募集を出しているか。**出していれば、その経路を選べます
- **同じ求人が、紹介サービス側にも出ているか。**両方に出ているなら、経路を選ぶ余地があります
- **応募前に、経路を変更できるか。**登録済みでも、まだ応募していない先なら選び直せる場合があります
経路の有利不利を推測するより、経路を自分で選べる状態を作るほうが確実です。
使わない方がいい人と、使ったほうがいい人を、軸ごとに書きます
「人それぞれです」とは書きません。あなたが今の転職で最も大事にしたいもの(軸)ごとに、編集部の結論を書きます。
| あなたの軸 | 編集部の結論 |
|---|---|
| 給与を上げたい | **使ったほうがいい。**条件の交渉と日程の調整を代行させる価値があります。ただし提案されるのは、そのサービスが扱っている求人だけです |
| 行き先がすでに1つに決まっている | **使わなくてかまいません。**その施設が直接の募集を出しているなら、直接応募で足ります |
| 情報だけを集めたい・自分の市場価値を知りたい | **使ってよい。**求人情報も相場の話も、あなたの支出は0円です。取れるものは取ってかまいません |
| 在職中で、動く時期を自分で決めたい | **使ってよい。ただし連絡の頻度と手段を最初に指定してください。**入職が決まらなければ収入が立たない構造上、早く進めたい力が働きます |
| 人とのやり取り自体が負担になっている | **無理に使わない。**やり取りを終わらせたい気持ちが判断に混ざるくらいなら、使わないほうが結果はよくなると編集部は考えます |
| 通える範囲が限られている | **問い合わせてから決めてください。**その圏域の求人を持っていなければ、登録しても選択肢は増えません |
**軸が2つ以上ある場合は、上から順に読まないでください。**最も譲れないもの1つで判断してください。複数の軸を同時に満たそうとして、決め手を失うのがいちばん避けたい形だと編集部は考えます。
使うと決めたなら、タダで取るものと、渡さないものを分けてください
編集部の方針は一つです。**タダで得られるものは全部取り、判断だけは渡さない。**取ってよいものは、あなたの支出が発生しない範囲のすべてです。
- 公開されていない求人の情報と、施設ごとの条件の相場
- 応募書類の添削と、面接で聞かれることの事前情報
- 面接の日程調整と、給与・勤務条件の交渉の代行
渡してはいけないものは2つだけです。どこへ行くかと、いつ動くか。この2つは、報酬の構造から自由な人が決めるべきです。
そのうえで、事業者そのものを比べる材料は口コミではなく、法律で公表が義務づけられたデータにあります。有料職業紹介事業者には、実績をインターネットで情報提供する義務があります(職業安定法32条の16第3項、同法施行規則24条の8第3項1号から5号)。掲載先は厚生労働省の人材サービス総合サイトです。この記事の文脈で特に見る価値があるのは、次の2つです。
- 4号の「手数料に関する事項」。取扱職種ごとの常用就職1件あたりの平均手数料率の公表は、2025年4月1日から始まりました
- 5号の「返戻金制度に関する事項」。前の節で見た提言の対象そのものです。制度を設けているかどうかは事業者によって異なります
**なお、この情報提供義務は医療・介護・保育に限った制度ではありません。**医療分野に限らず、有料職業紹介事業者すべてが負う義務です。医療の記事で頻繁に取り上げられるのは紹介手数料が病院の経営問題になっているからであって、制度が医療専用だからではありません。
**編集部は、この記事で特定のサービス名を挙げず、順位も作りません。**順位や評価を示すには、調査の方法・対象・時期を記事内に示す必要があります(景品表示法5条1号)。当メディアは看護師を対象とした調査を実施していないため、序列は作らず、あなたが自分でデータを引ける場所だけを示します。
千葉で「使わない」を選ぶなら、受け皿を先に確認してください
使わないと決めた場合、求人を自分で見つける必要があります。千葉県には、民間のサービス以外の窓口があります。
千葉県看護協会が運営する千葉県ナースセンターは、2025年度の実績として新規求人1,515人・新規求職者648人・就業412人を公表しています(「令和7年度事業報告」)。**この3つは同じ母集団の数ではないため、編集部は割り算をしません。**就業に至った人数が年間で数百人規模である、という読み方までにとどめます。利用の条件と取り扱う求人の範囲は、窓口で直接確認してください。
もう一つ確認しておきたいのは、あなたが通える圏域に、そもそも何施設あるかです。編集部が千葉県の病院名簿(2026年4月1日現在)を集計したところ、県内284病院の分布は圏域によって大きく違いました。
| 二次医療圏 | 病院数 |
|---|---|
| 東葛南部(船橋・市川・浦安など) | 61 |
| 東葛北部(松戸・柏・流山など) | 57 |
| 安房(館山・鴨川など) | 15 |
| 市原(市原市) | 13 |
**東葛南部の61に対し、市原は13です。**自分で探すという選択は、施設数の多い圏域ほど現実的になります。逆に選択肢が十数施設しかない圏域では、1施設あたりの情報の精度が効いてきます。

個別の労働条件や制度の当てはめについては、公的機関の窓口や専門家に確認してください。本記事は一般的な情報を整理したものです。
よくある質問
看護師転職サイトのデメリットは?
**編集部が最も重く見るデメリットは、提案される求人の母集団を自分で決められないことです。**紹介されるのは世の中の求人ではなく、そのサービスと契約している施設の求人です。連絡の頻度や担当者との相性も挙げられますが、こちらは最初に条件を伝えることで調整できる範囲があります。
看護師転職サイトの闇とは?
**編集部は「闇」という言い方をしません。**説明がつくのは報酬の構造だからです。入職が決まらなければ収入が立たないため、早く決めてほしい力が構造として働きます。悪意ではなく設計であり、設計がわかっていれば対処もできます。
看護師が転職サイトを使う際にトラブルになる事はありますか?
**編集部が調べた範囲では、看護師のトラブル件数を集計した公的なデータに行き当たりませんでした。**件数は示せませんが、事業者ごとの就職者数と離職者数は公表されています(職業安定法施行規則24条の8第3項1号〜3号)。人材サービス総合サイトで、登録前に確認できます。
看護師の転職サイトで情報だけのものは?
担当者がつかず求人情報の掲載だけを行うサービスは、法律上は募集情報等提供にあたります(職業安定法4条6項)。応募まで自分で行う形式で、連絡のやり取りは発生しません。あっせんを受けたいのか、情報だけが欲しいのかで選び分けてください。
看護師は転職サイトを使うべきですか?
**一律の答えはありません。**行き先が1つに決まっているなら使わなくてよく、条件の交渉や日程の調整を代行してほしいなら使う価値があります。判断の材料は、この記事の軸ごとの表にまとめました。
まとめ
- あなたが料金を払わないのは、職業安定法32条の3第2項が求職者からの手数料徴収を原則として禁じているからです
- 採用する側が払った手数料は、常用就職1件あたり平均で約103万円でした(令和6年度・全産業の平均。看護分野に限った金額ではありません)
- 2026年3月、日本医師会と四病院団体協議会が上限規制の導入などを提言しました。「使わない方がいい」という声には、病院の費用の話が混ざっています
- **紹介経由だと採用されにくいかどうかを、編集部は断定しません。**根拠になる公的なデータに行き当たっていないためです。経路の有利不利を推測せず、経路を選べる状態を作ってください
- 比べる材料は口コミではなく、公表が義務づけられた手数料と返戻金制度にあります
編集部の結論を繰り返します。**使うか使わないかは、サービスの良し悪しではなく、あなたの軸で決まります。**そして使うと決めた場合も、渡すのは作業だけです。
いま登録する必要はありません。ただし、行きたい施設の名前を数件書き出しておく作業だけは、使う場合も使わない場合も無駄になりません。
参考・出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)32条の3第2項(求職者からの手数料徴収の原則禁止)・4条1項・4条6項・32条の16第3項 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 (32条の3第2項は2026年9月5日にe-Gov法令API
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000141で条文本文を取得し、条・項番号と逐語を照合。その他の条は2026年7月26日〜7月28日に原文照合) - 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)24条の8第3項1〜5号 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012 (2026年7月26日〜7月28日に原文照合)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)5条1号 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134 (同上)
- 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表。手数料収入 約9,835億円/常用就職に係る手数料 約9,136億円/常用就職1件あたり 約103万円) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001683019.pdf /まとめページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukaishukei.html (2026年9月5日にURLの実在を確認)
- 日本医師会「有料職業紹介事業に関するワーキンググループ」報告書(2026年3月18日) https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20260318_1.pdf /要望書の手交(2026年3月24日・上野賢一郎厚生労働大臣)を含む医療機関向けの周知ページ https://www.med.or.jp/doctor/region/001940.html (2026年9月5日にページ本文で確認)
- 公益社団法人日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表。2024年度実績の離職率) https://www.nurse.or.jp/home/assets/20260331_nl01.pdf
- 厚生労働省 人材サービス総合サイト(許可・届出事業者の検索、就職者数・離職者数・手数料・返戻金制度の確認) https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/
- 公益社団法人千葉県看護協会「令和7年度事業報告」(千葉県ナースセンター事業・2025年度実績) https://www.cna.or.jp/uploads/media/2026/05/20260519094528.%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%97%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%A0%B1%E5%91%8A.pdf (2026年9月5日確認)
- 千葉県健康福祉部医療整備課「令和8年度 病院名簿」(2026年4月1日現在) https://www.pref.chiba.lg.jp/iryou/sidou/documents/r8byouinmeibo.xlsx (2026年9月5日確認)
