求人票に書かれる「賃金の額」に、賞与は含まれていません。法律が明示を求めている賃金から、賞与が文言で除かれているためです(職業安定法施行規則4条の2第3項5号)。
直接応募では、この抜けを代わりに埋めてくれる人がいません。だからといって、直接応募をやめる理由にはなりません。先に決めるのは経路ではなく、入りたい施設のリストのほうです。
リストができれば、直接の募集を出している施設には自分で申し込み、出していない施設と交渉が要る場面はエージェントに任せられます。この記事で扱うのは、その順番の話です。

直接応募とは、施設が出した募集に自分で申し込むことです
**直接応募とは、病院や施設が自分で出している募集に、あなたが直接申し込む形のことです。**あいだに職業紹介の事業者が入りません。
入らないことで変わるのは手続きです。募集を見つけるのも、書類を送るのも、面接の日を決めるのも、あなたと施設のあいだで完結します。
変わらないものもあります。**採用の可否を決めるのは施設で、労働条件を決めるのも施設です。**経路が変わっても、この2つの決定権は動きません。
入口になるのは、施設が自分で出している募集です。多くの病院・施設は、自院の採用ページに募集要項を置いています。ここから申し込めば、あいだに事業者は入りません。
決める順番は、リストが先で、経路は後です
**入りたい施設のリストは、自分で作ってください。**提案を受け取ってから選ぶ形にすると、選ぶ範囲そのものを他人が決めることになります。
提案されるリストがどういう性質のものなのかは、別の記事で扱いました。ここで書くのは、自分でリストを作るときの手順のほうです。
- **通える範囲を先に決める。**片道の所要時間の上限を1つ決めます。ここを決めないと、候補が県内全域へ広がって絞れなくなります
- **働きたい病棟の機能で絞る。**高度急性期か、急性期か、回復期か、慢性期か。同じ「病院」でも、病棟の機能が違えば1日の動き方が変わります
- **施設名を書き出す。**2つでも3つでもかまいません。数が少ないことは、この段階では問題になりません
リストができたら、1件ずつ採用ページを開いて、直接の募集が出ているかを見ます。出ていれば、その施設には自分で申し込めます。
出ていなければ、その施設を扱っている事業者を探すことになります。ここで初めて、登録するかどうかの話になります。
**リストが先で経路が後、という順番を崩さないでください。**経路を先に決めると、その経路が扱っている施設だけがあなたの母集団になります。
千葉県の圏域別に見ると、病棟の機能は均等に置かれていません
**手順2の「機能で絞る」は、千葉県なら県の公表資料だけでできます。**病床機能報告という制度があり、病棟ごとの機能が圏域単位で公表されているためです。
編集部は、2025年7月1日時点の病床機能報告のうち病院表256施設分を、二次医療圏ごとに合計しました(編集部の集計)。二次医療圏とは、入院医療を提供する体制を整える単位として県が定めた区域のことで、千葉県には9つあります。
| 二次医療圏 | 高度急性期 | 急性期 | 回復期 | 慢性期 |
|---|---|---|---|---|
| 千葉(千葉市) | 984 | 3,762 | 1,254 | 1,829 |
| 東葛南部(船橋・市川など) | 1,458 | 5,249 | 2,205 | 1,630 |
| 東葛北部(松戸・柏など) | 2,257 | 4,159 | 1,367 | 2,165 |
| 印旛(成田・佐倉など) | 1,601 | 2,095 | 691 | 1,572 |
| 香取海匝(銚子・旭など) | 75 | 1,417 | 285 | 688 |
| 山武長生夷隅(東金・茂原など) | 32 | 1,389 | 450 | 1,095 |
| 安房(館山・鴨川など) | 144 | 1,011 | 206 | 437 |
| 君津(木更津など) | 272 | 997 | 280 | 713 |
| 市原(市原市) | 108 | 1,358 | 355 | 164 |
| 県計 | 6,931 | 21,437 | 7,093 | 10,293 |
単位は病床です。病床の数であって、求人の数でも、看護職員の配置人数でもありません。
読み方を1つだけ示します。**高度急性期の病床は、東葛北部に2,257床ある一方で、山武長生夷隅には32床です。**同じ県内でも、機能によっては圏域を出ないと候補そのものを作れません。
これは施設の優劣の話ではありません。圏域ごとに求められている役割が違うという、配置の事実です。
なお、この集計の母集団は2025年7月1日時点の病床機能報告に載る病院表256施設です。有床診療所と休棟中の病棟は含めていません。**県の病院名簿にある284病院とは、時点も母集団も違います。**2つの数を割り算して1施設あたりの病床数を作ることはできません。

求人票に何を書くかは、法律が決めています
**求人票は広告ではありません。**募集をする側には、法律で明示しなければならない事項が決まっているためです。
根拠は職業安定法5条の3第1項です。
公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
(職業安定法5条の3第1項。2026年9月5日にe-Gov法令検索の法令APIで条文本文を取得して確認)
注目したいのは、義務を負う相手の並びです。**「労働者の募集を行う者」が入っています。**自院の採用ページで募集を出している病院は、これにあたります。
つまり直接応募でも、明示の義務は施設の側にあります。あいだに事業者がいないことは、明示されなくてよい理由になりません。
明示すべき事項の中身は、同じ条の4項が厚生労働省令に委ねています。その省令が職業安定法施行規則4条の2第3項で、明示事項を号ごとに並べています。
| 施行規則4条の2第3項 | 明示すべき事項 |
|---|---|
| 1号 | 業務の内容(変更の範囲を含む) |
| 2号 | 労働契約の期間 |
| 2号の2 | 試みの使用期間 |
| 2号の3 | 有期労働契約を更新する場合の基準(有期の場合) |
| 3号 | 就業の場所(変更の範囲を含む) |
| 4号 | 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日 |
| 5号 | 賃金の額(臨時に支払われる賃金・賞与などを除く) |
| 6号 | 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用 |
| 7号 | 雇用しようとする者の氏名または名称 |
| 8号 | 派遣労働者として雇用しようとする旨(派遣の場合) |
| 9号 | 受動喫煙を防止するための措置 |
書かれていない項目があれば、応募の前に聞いてかまいません。法律が明示を求めている事項について尋ねるのは、遠慮の要る質問ではありません。
表示そのものにも規制があります。虚偽の表示と、誤解を生じさせる表示は禁止されています(職業安定法5条の4第1項)。この禁止規定も、名宛人に「労働者の募集を行う者」を含みます。
ただし、記載が薄いことはそのまま違反の証拠になるわけではありません。聞けば済むことを、聞かずに判断材料にするほうが損になります。
「変更の範囲」は2024年4月1日から加わりました
1号と3号の括弧書きにある「変更の範囲」は、2024(令和6)年4月1日から明示事項に加わったものです。職業安定法施行規則の側の改正は、令和5年厚生労働省令第89号です。
意味するのは、雇い入れた直後の話ではありません。その労働契約が続くあいだに、業務の内容と就業の場所がどこまで変わりうるかを示す欄です。
看護の求人でここが効くのは、法人が複数の施設を持っている場合です。応募したのが1施設でも、変更の範囲が法人内の全施設になっていれば、異動の可能性はその範囲まで及びます。
「当法人が定める場所」のように地理的な区切りのない書き方は、違法だと決めつけずに、面接で範囲を聞く材料にしてください。聞いた答えは、内定後に届く労働条件通知書と突き合わせられます。
賃金の額に、賞与は含まれていません
5号の条文には括弧書きがあります。
賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項
(職業安定法施行規則4条の2第3項5号。2026年9月5日にe-Gov法令検索の法令APIで条文本文を取得して確認)
**法定の明示事項としての「賃金の額」からは、賞与が文言で除かれています。**求人票に賞与の記載がないことがあるのは、この条文の作りと整合します。
だから賞与は、聞かなければ分かりません。年収の見当をつけるには、基本給の欄と賞与の実績を別々に確かめる必要があります。
編集部が照合したのは、職業安定法と同施行規則の範囲だけです。他の法令が賞与について別の定めを置いていないかまでは確認していません。
ただし、書かれた場合には話が別になります。求人票に賞与の月数が書いてあれば、その表示には5条の4第1項がかかります。
直接応募に切り替えると、代わりにやる人がいなくなります
**直接応募で減るのは、あなたが払う費用ではありません。**もともと求職者は費用を払っていないからです。減るのは、代わりに動く人のほうです。
戻ってくる作業を並べます。どれも「できないこと」ではなく、「自分でやること」です。
| 自分に戻る作業 | 何が起きるか | どう扱うか |
|---|---|---|
| 条件の交渉 | 給与・夜勤の回数・入職日を、施設と直接話す | **交渉がいちばん重いなら、その施設だけ紹介経由に回してよい。**代行を頼める相手がいる意味は、ここに最も出ます |
| 選考日程の調整 | 面接日の候補出しと変更を、自分で連絡する | **シフトが先に確定しているなら、直接のほうが速い。**あいだに人が入るぶん、往復が増えるためです |
| 求人票に出ていない情報 | 病棟ごとの人員配置や残業の実態を、自分で聞く | **職場見学を申し込んでください。**求人票の外側は、見るか聞くかしないと埋まりません |
| 不採用のときの理由 | 施設から理由が返ってくるとは限らない | **返らない前提で臨む。**次に活かす材料が要るなら、紹介経由を1社は残しておく価値があります |
4行のうち、あなたにとって重いものが1つでもあれば、その施設だけ経路を変えてかまいません。経路は、施設ごとに決められます。
経路で確実に変わるのは、受かりやすさではなく費用です
**「直接応募のほうが受かりやすい」とは書きません。**応募経路ごとの採用率を示した公的なデータに、編集部は行き当たっていないためです。
逆向きの断定もしません。「紹介経由だと不利になる」も、同じ理由で書けません。
代わりに、経路で確実に変わるものを挙げます。**紹介を受けて採用すれば紹介手数料が発生し、施設が自分で受け付けた応募には紹介手数料が発生しません。**これは定義の話であって、選考の話ではありません。
費用の安い応募者ほど受かりやすい、という接続は成り立ちません。採用の可否を決めるのは、面接に出てくる人と、そこで話される中身です。
応募する側として、著者(コロ助)は100社を超える企業の選考を受けてきました。書類の通過率は8割を超えています。
ただし看護の選考ではなく、直接応募に限った数字でもありません。だからこの数字自体を、本記事の根拠には使いません。
持ち込むのは1点だけです。**応募先の一覧を誰が作ったかで、後から効いてくるものが変わります。**これは編集部の意見であり、上の数字から導いたものではありません。
併用のしかたと、直接応募を後回しにする判断
**二者択一で考える必要はありません。**リストの施設ごとに直接と紹介を使い分けるのが、いちばん無駄の少ない形です。
併用で守ることが1つあります。**同じ施設に、2つの経路から同時に申し込まないでください。**先に届いたほうが有効になり、後から届いたほうは取り下げになります。その連絡をするのは、あなたです。
エージェントに登録済みでも、まだ応募していない施設なら経路を選び直せます。**担当者には、自分で申し込む予定の施設名を先に伝えておいてください。**伝えてあれば、同じ施設の提案が来たときに重複を避けられます。
直接応募を後回しにする判断もあります。次に当てはまるなら、先に紹介経由を通したほうが早く終わります。
- **リストがまだ1件も作れていない場合。**候補を挙げる作業自体を手伝ってもらい、その提案をリストの叩き台にできます
- **在職中で、面接の日程を自分で動かせない場合。**シフトの都合を先方に伝える往復が、いちばん時間を食います
- **同じ法人の複数施設をまとめて見たい場合。**採用ページが施設ごとに分かれていると、条件の違いを1件ずつ開いて比べることになります
後回しにするというのは、やめるという意味ではありません。リストができた時点で、直接応募は選択肢に戻ります。
**この記事には、施設名もサービス名も出てきません。**施設名を出さないのは、職場としての評価を当メディアが自分で確かめていないからです。サービス名を出さないのは、序列を示すのに必要な調査の方法・対象・時期を書けないからです(景品表示法5条1号)。
制度の一般的な整理として、ここまで書きました。あなたの雇用契約そのものについて判断が要る場面では、労働局か専門家の窓口を使ってください。
よくある質問
看護師の転職で直接応募するメリットは?
**手続きが、あなたと施設のあいだで完結することです。**日程の調整も条件の確認も、あいだに人が入りません。あわせて、採用する側には紹介手数料が発生しません。ただし、それが選考の通りやすさにつながるかどうかは、公的なデータでは確かめられていません。
看護師は直接応募の方が受かりやすいですか?
**受かりやすいとも、受かりにくいとも書きません。**応募経路ごとの採用率を示した公的な集計を、編集部は持っていないためです。判断の代わりになるのは、行きたい施設が自院の採用ページで募集を出しているかどうかです。出ていれば、経路はあなたが選べます。
看護師の直接応募の流れは?
**施設の採用ページで募集要項を確認し、そこに指定された方法で申し込むのが基本の流れです。**その後は書類選考、面接、内定、労働条件通知書の受け取りと進みます。応募の方法は施設ごとに違うため、募集要項に書かれた手順に従ってください。求人票に書かれていない条件は、面接までに聞いておくと後から動かしやすくなります。
看護師転職サイトから直接応募するにはどうしたらいいですか?
**同じ施設に、2つの経路から同時に申し込まないことが先です。**求人情報を掲載するだけのサービスなら、掲載されている募集から自分で申し込める場合があります。一方、担当者があっせんする形で紹介を受けた施設は、その経路で進むのが原則です。迷ったら、応募の前に担当者へ経路を確認してください。
転職エージェントと直接応募は併用できますか?
**併用できます。**施設ごとに経路を分ければ、重複は起きません。登録の時点で、自分で申し込む予定の施設名を担当者に伝えておくと、同じ施設の提案を避けられます。
転職エージェントで落ちて直接応募してもいいですか?
**編集部が確認した範囲では、これを一律に禁じる法令の規定は見当たりませんでした。**ただし、事業者と施設のあいだの契約で再応募の扱いが決まっている場合があります。応募の前に、施設の採用窓口へ直接確認してください。
まとめ
- 直接応募とは、施設が自分で出している募集に、あなたが直接申し込む形です。変わるのは手続きで、採用の可否と労働条件を決めるのは、どちらの経路でも施設です
- **順番はリストが先で、経路は後です。**経路を先に決めると、その経路が扱っている施設だけが母集団になります
- 募集をする側には、労働条件を明示する義務があります(職業安定法5条の3第1項)。この義務は「労働者の募集を行う者」にもかかるため、直接応募でも施設の側に明示の義務があります
- 明示事項は同条4項の委任を受けた施行規則4条の2第3項が号ごとに定めています。1号の業務の内容と3号の就業の場所には「変更の範囲」が含まれ、5号の「賃金の額」からは賞与が除かれています
- **「直接応募のほうが受かりやすい」は書けません。**経路で確実に変わるのは、採用する側に紹介手数料が発生するかどうかだけです
この記事の主張を一行にすると、こうなります。**経路は、リストの後からついてくるものです。**先に経路を決めた瞬間に、選べる施設の範囲もそこで決まってしまいます。
リストが2件しかなくても、それはあなたが自分で挙げた2件です。誰かに並べてもらった20件より、そちらのほうが後で効いてきます。
参考・出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)5条の3第1項・第4項(労働条件等の明示と省令への委任)、5条の4第1項(虚偽の表示・誤解を生じさせる表示の禁止) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 (2026年9月5日にe-Gov法令API
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000141?elm=Article_5_3および?elm=Article_5_4で条文本文を取得し、条・項番号と逐語を照合) - 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)4条の2第3項(法5条の3第4項の委任を受けた明示事項。1号=業務の内容〔変更の範囲を含む〕/3号=就業の場所〔変更の範囲を含む〕/4号=始業終業の時刻等/5号=賃金の額〔臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則8条各号に掲げる賃金を除く〕/6号=各保険の適用/9号=受動喫煙を防止するための措置) https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012 (2026年9月5日にe-Gov法令API
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322M40002000012?elm=Article_4_2で条文本文を取得し、柱書・ただし書き・各号の逐語を照合) - 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」(職業安定法施行規則の一部を改正する省令=令和5年厚生労働省令第89号。施行日 令和6年4月1日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)5条1号 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134
- 千葉県健康福祉部医療整備課「病床機能報告制度(令和7年)」(各二次保健医療圏「現状」の病院表。2025年7月1日時点。圏域別の高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床数は、病院表256施設分を編集部が合計したもの) https://www.pref.chiba.lg.jp/iryou/byousyoukinou/r7byousyoukinou.html (2026年9月5日確認)
- 千葉県健康福祉部医療整備課「令和8年度 病院名簿・診療所名簿・歯科診療所名簿」(2026年4月1日現在。県内の病院284施設) https://www.pref.chiba.lg.jp/iryou/sidou/documents/r8byouinmeibo.xlsx (2026年9月5日確認)
